私たちの街（東京都多摩市）は東京のベッドタウンと呼ばれてきた。
「多摩ニュータウン」などと当時としては真新しく名付けられはしたものの日本が高度成長を遂げていた時代に懸命に働いていた人々に寝に帰ってもらうためにできた官製の街。
そしていつしか時が過ぎ、あの時代の昭和は遠くになりにけり。
平成時代が無為にすぎて更に今新しい時代を迎えようとしている。
その役割は終えて、年老い今や死を迎えるためのベッドタウンになろうとしている。（グラフ１、２）

官製のベッドタウンであったために橋や道路、小中学校の教育施設、そして公共施設さえも私達が自分で作ったものではない。その建築費の負債がないこともあって幸いにも多摩市の財政は比較的豊かではある。(グラフ３、４）
そのためもあってかパルテノン多摩の改修費用８５億　新しい図書館５０億が容易に捻出できるらしい。
バブル時代真っ盛りの1987年に８０億で建てたパルテノン多摩は現在も尚３０億の簿価を残しながら８５億で改修するという。これは最早改修とは言えない。（グラフ５）
しかし昭和の時代から歌い続けてきたコーラスグループにとってはパルテノン多摩はかけがえのない施設なのだろう。
中央図書館がないというだけで新しい図書館を作るという。
本を巡る環境は大きく変わろうとしているにも関わらず、大きな図書館がないわねと思い続けた人々にとっては新しい図書館は念願の施設となるのだろう。
合わせて１３５億という巨額の費用をかけても昭和の発想をそのまま維持しなければならないとする昭和の人の声は大きく、この人達が市政を動かしこの決定がなされたのだろうと容易に想像がつく。

しかし本当にこれで良いのだろうか？　新たにここに住み着いた人、新たにここで生まれた人にとっては最早ベッドタウンは返上しなければならないのではないのか？
立派な公共施設もあるのに越したことはない。しかし多摩市の公共施設は他市に比べて随分と恵まれている。（グラフ６）
今この街に必要なのは新陳代謝が促されてベッドタウンを返上し他の街に負けずに老いも若きも人の息づく活気ある街にすることがまずは喫緊の課題ではないか？
１３５億はこのために使うべきではなかったか？　
活気ある魅力的な街にするにはやはり商業施設に来てもらわねばならない。公共施設を建てるのなら賑わいを醸し出すための呼び水にすることが公共施設建設の重要な目的としなければならないのではないか？　その公共施設だけでなく周りの商業施設や交通の便とも相まって発展しているという街の姿を描かなければならないはずである。三越に逃げられた多摩センター地区は尚更のことである。
今東京都心部はオリンピックを控えてまさに魅力を増そうとしている。そしては若い人はそれに惹かれて都心部で住みたがるに違いない。都心部だけでない周辺の多く街でも若い人に住んでもらうための工夫が凝らされている。すでに街の競争が始まっているのである。
公共施設は最早一部の人がイベントをするためだけの施設であってはならないはずである。このような大きな構想力を持って街の戦略を練らねばならないはずであった。
にも関わらず行政からも議会からもそのような議論を聞いてたことがない。
この街は昭和の遺産を維持するだけの街で良いのか？　いつまでも死を迎えるためのベッドタウンのままで良いのか？